猗窩座の人間時代である「狛治」には、病気の父親を助ける薬代を稼ぐために、スリをしていたという悲しい過去ある。
狛治の両腕に刻まれていた「3本の太い線」は、江戸時代における「入墨刑」がモデルになっていると考えられる。
鬼滅の刃18巻の「設定こぼれ話」において、
罪人の入れ墨が鬼の文様と混ざり合い全身に広がっているように見えます
<参照>鬼滅の刃18巻の「設定こぼれ話」
と語られている通り、猗窩座の入れ墨は「狛治時代の罪」が受け継がれているもので間違いない。
当記事は、作品の感想を主体とした独自の考察を元に構成されていますが、一部ストーリーの展開が読み取れる「ネタバレ」部分も存在します。
作品未読の方は、十分ご注意ください。
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猗窩座の入れ墨はどういう罪の証?江戸中期の刑罰
狛治が生きていたのは、江戸時代中期と考えられる。
その時期の入墨刑について、分かりやすく解説しよう。

入墨刑とは何か?
入墨刑は、江戸時代中期にあたる1720年頃、「暴れん坊将軍」として有名な松平健ではなく、8代将軍・徳川吉宗が行った「享保の改革」の中で法制化された刑罰制度である。
それ以前は、スリや窃盗などのいわゆる軽犯罪でも「罪人の耳や鼻を削ぎ落とす」といった、残酷で非人道的な刑罰が当たり前のように行われていた。
しかし、「残酷過ぎる、更生の機会を奪う」といった理由から、改革がなされた。
命を奪うことなく、「こいつは犯罪者だぞ!」という一生消えない入れ墨墨を背負わせるという代替案として、入墨刑が生まれたのだ。
現在、海外で性犯罪者などに行われているGPSチップの埋め込みなどと似た、「見せしめ+再犯防止」の取り組みだと言える。
対象となる罪は、スリや万引き、少額の窃盗といった軽犯罪で、対象となるのは町人や百姓といったいわゆる庶民。
武士には適用されないという、不公平な刑罰だった。
入墨のデザインは地域で異なる
その刑罰としての入れ墨も、地域によって内容が異なるから面白い。
狛治の両腕に刻まれたラインを重ねのデザインは、江戸をベースにしたものだと考えられる。
| 地域 | デザイン(場所・形状) | 解説・特徴 |
|---|---|---|
| 江戸 | 左上腕に2本の黒い線 | 幅は約3cm間隔。最も一般的。 |
| 京都 | 二の腕に1本の太い線 | 江戸よりもシンプル。 |
| 大坂 | 右上腕に2本の黒い線 | 江戸とは反対の「右腕」に入れるのが特徴。 |
| 広島 | 額に「犬」の文字 | 1回目で「一」、2回目で「ノ」、3回目で「大」を書き足し、4回目で「犬」になる。 |
| 紀州(和歌山) | 額に「サ」の文字 | スリの「サ」に由来すると言われる。 |
| 長崎 | 左上腕に「十字架」や「○」 | キリスト教の影響や、時期によって円形が用いられた。 |
| 薩摩(鹿児島) | 左肩に「○」のマーク | 島津家の家紋(丸に十の字)の簡略版とも言われる。 |
「四度目の入れ墨」は死刑のはずだが…
当時の法律では、「入れ墨を入れられる回数=再犯数」にルールが設けられていた。
スリや窃盗といった軽犯罪は常習性が高く、一度捕まって入れ墨を入れられても、また同じ罪を繰り返す例は多かったのだろう。
スリの場合、初犯では、腕などに1回目の入れ墨墨を入れられるたり、それにプラスしてムチ打ちなどの体罰もあったようだ。
再犯して2回目の捕縛と慣れば、さらに新しい入れ墨を追加される。
仏の顔も三度までという言葉があるが、入墨刑の場合「3度まで」は何とか、入れ墨墨を入れることで許してもらえる。
だが、4回目の入れ墨はない。
なんと、4回目は問答無用で「死罪(死刑)」なのである。
ただし、場合によっては江戸追放など、死刑以外の処罰が行われることもあったようだ。
狛治の場合は6本もの入墨で江戸払い
狛治の腕には、片腕に3本ずつで両腕合わせて「6本」もの線が入ってた。
実際の江戸時代の法律であれば、死罪になっていてもおかしくないレベルだと言える。
ただ、これは「鬼滅の刃」という作中の表現であり、史実と異なっていても何の問題もない。
狛治の場合、父親のためという情状酌量や子どもであるという理由もあり、「江戸払い」で済んだのかもしれない。
ただ、6本もの入れ墨は、ある種「異常な回数」であり、「父親のために罪を犯し続ける」という常人離れした執念と辛抱強さを現していると言える。
入れ墨を入れられた者は、罪人として、まともな仕事に就くこともできず、世間から冷遇されるという「社会的な死」を与えられていると同義だったと考えられる。
そんな状況の狛治を殴り倒し、自分の門下生として受け入れ、娘の看病をさせていた素山慶蔵は、相当肝が座っていたのだなと感心させられる。
猗窩座の入れ墨と同じ印象的な紋様を持つ漫画キャラクター
両面宿儺(呪術廻戦)
虎杖の体に宿儺が受肉し、表側に出てきた時、顔や全身に黒い線の紋様が浮かび上がる。
猗窩座とビジュアルが似ていることを良く指摘されるキャラクターの一人である。

<参照>呪術廻戦 フィギュア 宿儺 すくな MAXIMATIC Special ver.
阿散井恋次(BLEACH)
額から眉の上、首、胴体、腕など、全身に黒い線が入っている。
インディアンなどを想起させる、どこか部族的な雰囲気があり、野性味あふれる入墨だ。
脱獄囚(ゴールデンカムイ)
アイヌの金塊の在り処を示す暗号となる入墨を24人の死刑囚たちの体全体に彫るという前代未聞の所業。
幾何学的な線や模様の刺青が彫られた刺青人皮を求め、激しい争奪戦が繰り広げられた。
グレイ・フルバスター(FAIRY TAIL)
「氷の滅悪魔法」を得た際、それを使用することで右半身の顔から腕、胴体にかけて、印象的な黒い文様が浮かび上がる。
体を這うように現れる太いラインの模様は、猗窩座ほどシンプルではなく、デザイン性が高い。
メリオダス(七つの大罪)
「魔神族」の力を解放することで、額にあるアザが拡大し、顔や体にも黒い紋様が浮かび上がる。
入墨というより、模様?
やはり、両面宿儺と猗窩座はイメージが近い。
さすがのジャンプつながりである。
入墨と連動する形で、羽織の背中に刻まれた模様にも深い意味がある。
ぜひこちらの記事「猗窩座の背中に隠された恋雪への想い。羽織に刻まれた「逆さ孤峯の雪」の文様」をご覧いただきたい。
